海外旅行・出張で気をつけたい感染症

企業のグローバル化、航空路線の充実、航空運賃の低価格化などによって、海外に渡航する日本人の数は増加しており、その目的地も従来の欧米・アジアだけでなく、アフリカや南米など世界の隅々にまで及んでいます。

海外進出が目覚しい

2000年代に入り、同時は多発テロ事件、イラク戦争、SARS(重症急性呼吸器症候群)などの影響を受け、右肩上がりで増加してきた日本人の海外出国数は、一時的に減少しましたが、近年は再び1700万人に迫るところまで回復してきています。

世界各国の気候風土が異なるように、その国によって流行している病気や医療事情も異なっています。多くの場合、特定地域における流行病の種類やその状況についてリアルタイムの情報を得ることは簡単ではなく、そのことが海外赴任者、特に子供を持つ方の大きな不安材料となっているようです。

海外旅行については、従来の団体でのツアーに加えて個人での旅行が大幅に増加しています。観光地だけを足早で巡る大方のツアーと異なり、現地の地域社会に触れることができるというメリットは大きい反面、感染症のリスクも大きくなることを知っておく必要があります。

海外赴任者・旅行者が感染症に罹らないようにするためには、感染症の性質や発生状況、予防接種による予防の可能性などについての知識を予め有していなければなりません。

海外で最も感染する頻度が高いのは、下痢を主症状として、発熱、腹痛、嘔吐などを訴える急性腸炎です。原因は現地で十分に加熱されていない肉や魚、野菜、果物、あるいは水道水を介してウイルス、細菌、原虫などに感染することです。次に多いのが風邪や気管支炎などの呼吸の病気が多く、熱帯病として重要なマラリア、デング熱、腸チフスなどが続きます。

感染症に罹るのは、何らかの経路を経て病原体が人間の体の中に侵入して、体内で増殖するためです。逆に感染経路を知り、注意を払うことで予防は可能です。食物を感染源とするのは、下痢、腸チフス、パラチフス、A型肝炎、E型肝炎などです。動物を感染源とするのは、狂犬病、高病原性鳥インフルエンザ、過を媒体としたマラリア、デング熱も有名です。特にデング熱は、2014年に東京都内で海外渡航歴のない人の国内感染が確認され大きく報道されました。

また近年はセックスを主な感染経路とする性感染症、すなわちHIV感染症、B型肝炎、梅毒なども増えています。性感染症の予防には、特定のパートナー以外とのセックスは避け、コンドームの着用を忘れない、体調の悪い人との接触を避けることが大切です。海外渡航者が遭遇する感染症の大半は、発病早期に医療機関を受診して適切な治療を受けることで、深刻な結果を避けることができます。